もう一度、あの夏に。

まだあの時からほんのわずかしか経っていないけれど。駅からの遠い道のりを、老舗の中華料理店を、ラーメン屋を、夜のコンビニを、余りのパンを、2人で寄り添って座った人のいない浜辺を、古びたベッドを、喫茶店で分け合ったアイスティーフロートを、商店街の唐揚げを、目を閉じた睫毛を、寄せあった頬を、夏が来る度にこれから思い出すのだろう。そこで話した些細な会話も、体温も、一生忘れることはない。もう一度だけ、短かったあの夏に。せめてもう一度だけ、2人であの7月に。